*機械システム創成学研究室の研究テーマ [#xcbc0636]
現代社会では,私たちの身の回りのさまざまな分野や領域で自動化システムの導入や開発が進み,作業の精度や信頼性の向上,省力化に大きく貢献しています.機械化(mechanization)や自動化(automation)は,ある作業目的を達成するために必要な諸機能を,本来の作業者である人からいわゆる機械(コンピュータ制御)に委譲することを意味します.その究極は作業から人を排除して全てを機械が担当する完全自動化といえ,そのための機械の性能向上や高度化は日進月歩で進んでいます.しかし,テクノロジーがどれほど進歩したとしても,人の存在を作業から排除することはできません.人はユーザとして,監督者あるいは共同作業者として機械と関わり続けます.機械やコンピュータが私たち人間を凌駕する能力を発揮する作業がある一方で,人でなくてはこなせない作業もまた数多く存在します.例えば,機械の状況判断は設計時に想定されたものに限定されるために,人のように不測の事態に対して機転を利かせて柔軟に対処することはできません.高次の戦略的な意思決定が求められる場面や非常事態は,想定されたシナリオ外で状況が進展するのが常で,人の判断を仰ぐことが避けられないのです.また,最先端の自動化技術でも機械化できない熟練技能が存在します.そのような技能に対して機械が果たすべき役割は,技能の潜在的な構造の可視化やコミュニケーション支援によって人同士や組織をつなぎノウハウやコツの伝達を促す,人との「協働」です.機械の設計には,それが実現すべき機能そのもの以外に,それを利用する人間の特性や彼らとのコミュニケーションといったものへの理解と配慮が求められるのです.
私たちの周りでは,人の作業負担を軽減するためにさまざまな機械技術が導入されています.航空機のオートパイロットや自動車のアダプティブクルーズコントロールといった運転支援がその代表例です.高度や方位,速度を一定に保つという非常に単純な作業では機械やコンピュータは私たち人間の能力を遥かにしのぎます.しかし,複雑な作業となると機械による自動化はまだ十分ではなく,人による作業には及びません.そのため,惑星探査ロボットによる探査ミッションなどのように,実際のさまざまな複雑な作業は,人と機械それぞれが得意な作業を分担して行うことにより実行されています.将来,機械の能力が上がれば上がるほどに,逆に人と機械が協力して働かなければならない場面はいまより多くなると考えられます.例えば,高齢化社会を支えるために,工場内だけでなく日常生活においてもロボットなどのさまざまな機械技術を用いることが期待されていますが,そのような場面においても,人が機械の操作を誤ったり機械が人に危害を与えたりするようなことがないように,人と機械が互いを理解し合いながら協力していくことが求められます.

機械システム創成学研究室では,メンバー各自がこのような問題意識に立ち,「人と機械のより良い関係づくり」をモットーとして,以下のような研究テーマに取り組んでいます.
-熟練操作技能の分析と作業支援技術への応用に関する研究
-複雑な機械システムのユーザ・インタフェースの設計と評価に関する研究
-機械制御および人間特性理解のための適応・学習アルゴリズムに関する研究
-組織活動のダイナミクスの分析と生産性向上のための支援技術に関する研究
現在の機械はこのように人との「協働」を行うためには十分ではありません.それは,人と機械が協働するための仕組みがうまくできていないからです.このために,人は得体が知れない複雑な機械を相手にせねばならず,安心して作業することができません.わずかな操作の誤りであっても事故につながる可能性があるのです.また,現在の機械は,例えば工場における組み立てロボットのように,事前に決められた環境で動作することだけを考えて作られています.人と協働できる機械を実現するためには,これまでのように人が機械の論理に合わせるのではなく,機械の側が予測困難で多様な振る舞いをする人に合わせることが求められます.しかし,このような不確実な環境で動作する機械の設計方法はまだまだ十分ではありません.

いずれのテーマも機械による人の作業の代替を超えた「人間機械協調系」の実現を目指し,人と機械が互いの不足を補い合う,人と機械をつなぐシステムづくりのための実践・理論研究です.
たくさんの機能を備えた複雑な機械をうまく使いこなすために,人は何を頼りにどのような判断をしているのでしょうか?
また,不確実な環境で動作するために機械には何が必要であり,どのように作ればよいのでしょうか?

私たちの研究室ではこのような観点から,人と機械が互いの不足を補い合う,人と機械の協働のための理論づくりを目指して研究に取り組んでいます.

*具体的な研究例 [#v964bf3e]
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