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機械システム創成学研究室

機械システム創成学研究室では,「人間と機械システムのより良い関係作り」を大きな研究テーマとして活動しています.主には,人間の生活・感性の領域に密接に結びついた多機能性や複雑性を有する機械製品のインタフェースの人間中心設計論を展開しています.その為には環境や道具との相互作用の中で変わりゆく存在としての人間を理解する必要があり,人間の身体的・社会的知性に対する構成論的研究も同時に行っています.
私たちの周りでは,人の作業負担を軽減するためにさまざまな機械技術が導入されています.航空機のオートパイロットや自動車のアダプティブクルーズコントロールといった運転支援がその代表例です.高度や方位,速度を一定に保つという非常に単純な作業では機械やコンピュータは私たち人間の能力を遥かにしのぎます.しかし,複雑な作業となると機械による自動化はまだ十分ではなく,人による作業には及びません.そのため,惑星探査ロボットによる探査ミッションなどのように,実際のさまざまな複雑な作業は,人と機械それぞれが得意な作業を分担して行うことにより実行されています.将来,機械の能力が上がれば上がるほどに,逆に人と機械が協力して働かなければならない場面はいまより多くなると考えられます.例えば,高齢化社会を支えるために,工場内だけでなく日常生活においてもロボットなどのさまざまな機械技術を用いることが期待されていますが,そのような場面においても,人が機械の操作を誤ったり機械が人に危害を与えたりするようなことがないように,人と機械が互いを理解し合いながら協力していくことが求められます.

従来の工学研究においては,現場から人間を排除して機械に全て任せる完全自動化を主な目的として研究が行われてきました.しかしこのような自動化がどれほど進んでも,非常時に人間の判断を仰ぐことはやはり避けられないというのが実状です.なぜならば,現在の自動化機械システムは,観測された情報・兆候を自らの経験に則り仮説を立て,意味づけし,解釈していくという人間特有の記号過程(セミオーシス)というプロセスを実現できず,設計者によりモデル化された系に対して設計された規範に基づき行動するのみです.設計時の想定から逸脱した状況については一般に対処できません.よって,現在の安全・安心を実現する機械システムでは,人間を排除する完全自動化ではなく,お互いの不足点を補い合う共生的な設計論が求められます.そのため新たな課題として『人間をいかにして機械システムの中に取り込み,両者の自然な関係性を築き上げるか』ということが重要視されるようになってきました.それを実現するためには,従来の行動主義心理学等でみられるように人間を静的な存在として捉えるのではなく,動的に変化する存在として位置づける視点が重要になります.
現在の機械はこのように人との「協働」を行うためには十分ではありません.それは,人と機械が協働するための仕組みがうまくできていないからです.このために,人は得体が知れない複雑な機械を相手にせねばならず,安心して作業することができません.わずかな操作の誤りであっても事故につながる可能性があるのです.また,現在の機械は,例えば工場における組み立てロボットのように,事前に決められた環境で動作することだけを考えて作られています.人と協働できる機械を実現するためには,これまでのように人が機械の論理に合わせるのではなく,機械の側が予測困難で多様な振る舞いをする人に合わせることが求められます.しかし,このような不確実な環境で動作する機械の設計方法はまだまだ十分ではありません.

当研究室では,認知科学,心理学,生態学的認識論,情報理論,統計的学習理論,人間工学,ファジィ,計算論的神経科学といった様々な知見をもとに,よりよい人間-機械協調系を実現するための研究を行っています.
たくさんの機能を備えた複雑な機械をうまく使いこなすために,人は何を頼りにどのような判断をしているのでしょうか?
また,不確実な環境で動作するために機械には何が必要であり,どのように作ればよいのでしょうか?

私たちの研究室ではこのような観点から,人と機械が互いの不足を補い合う,人と機械の協働のための理論づくりを目指して研究に取り組んでいます.


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